2009年10月6日火曜日

天下り、出身の関連法人へ5割 あっせん一元後も減らず

 国家公務員の再就職を一元的にあっせんする「官民人材交流センター」が、昨年末の発足から8月末までに幹部公務員172人をあっせんし、うち5割弱の81人を出身省庁が所管する公益法人(社団法人・財団法人)に天下りさせていたことが分かった。所管省庁の出身者が過去5代以上にわたって独占してきた「指定席」ポストへの天下りも7人いた。民間企業への仲介は2割強で、幹部級については同センター発足前と実態は変わっていない。
 センター設立前は各省庁がそれぞれ再就職をあっせんしていたが、利害関係のある公益法人や関係業界に偏りがちだった。このため、あっせんを同センターに一元化することで、癒着を断ち切る狙いがあった。しかし、民主党は同センターを「天下りバンク」と批判し、鳩山由紀夫首相が9月29日、同センターも含めて国家公務員の天下りあっせんを認めない方針を表明。これを受け、同センターも組織の改廃に伴う離職の場合を除き、新たなあっせんをしないと決めている。
 同センターの内部資料などをもとに朝日新聞社が取材したところ、同センターのあっせんで8月末までに再就職した公務員OBは293人で、再就職先が判明したのは本省課長・企画官級以上の幹部OB172人。うち、所管する公益法人への天下りが最も多かったのは国土交通省の28人。次いで経済産業省14人、財務省13人、総務省12人だった。
 07~08年度に、出身省庁から補助金や委託費を受けた公益法人に天下りしたのは23人。経産省の8人が最多で、厚生労働省と国交省が各4人、総務省3人と続く。
 出身省庁所管の独立行政法人や特殊会社などへの天下りは16人。所管以外の公益法人などへの再就職も11人いた。
国交省所管の「社団法人全国建設業協会・専務理事」や財務省所管の「財団法人日本関税協会・常務理事」など7ポストに計7人が天下りしたが、これらのポストは過去5代以上にわたり、所管省庁出身者が占めている。
 一方、民間営利企業への再就職は38人で、全体の2割強にとどまった。民間からの求人は常時数百件あるものの、処遇の条件が折り合わなかったという。
 総務省によると、同センター発足前の07年8月~08年12月、幹部公務員OBの再就職者(自営業を除く)1076人のうち、公益法人への再就職は約半数の530人、民間営利企業・法人は約2割の190人で、同センター発足後とほぼ同じ割合だった。
 同センターは「ある行政分野について詳しい人、知識のある人という形での求人が多く、結果として(出身省庁が所管する)公益法人が一番多くなった」としている。(勝亦邦夫)
■新藤宗幸・千葉大教授(行政学)の話 官民人材交流センターは、各省庁の官房人事課がやっていた天下りのあっせんを別の体裁でやるだけの組織と言える。鳩山政権は天下りあっせんの禁止を打ち出しているが、先に天下った官僚OBが後輩を呼び寄せてポストを譲る「裏ルート」は含まれておらず、「抜け道」として残る可能性がある。公益法人は、事業や補助金といった「おみやげ」付きで天下りを受け入れてきた。すそ野が広く、天下り先となっている公益法人そのものを整理する必要がある。
 〈官民人材交流センター〉 予算や権限を背景にした天下りをなくす目的で、07年の国家公務員法改正に基づき、各省庁の再就職あっせんを原則禁止する代わりに発足した。50歳以上か本省課長級以上の国家公務員の人材情報を登録、勧奨退職や組織の改廃に伴う離職の公務員を企業や団体に仲介する。08~09年度の運営費は計18億6千万円。

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