2010年6月14日月曜日

生活保護の老齢加算金廃止、初の違法判断

生活保護の老齢加算金廃止、初の違法判断
 70歳以上の生活保護受給者に支給されていた老齢加算金の廃止は不当として、北九州市に住む70~90歳代の生活保護受給者39人が、国の保護基準改定に従って支給をやめた同市に、支給廃止処分の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が14日、福岡高裁であった。

 古賀寛裁判長は、国の基準改定について「激変緩和措置を十分考慮しておらず、正当な理由のない改定を禁じた生活保護法に違反している」と判断。原告敗訴の1審・福岡地裁判決を取り消し、国に従った市の処分を取り消した。
 原告弁護団によると、老齢加算廃止を巡る訴訟で、廃止決定の違法性を認めた判決は全国初。同様の訴訟は全国8地裁で起こされ、福岡、東京など4地裁で原告側が敗訴した。今年5月には東京高裁で原告側控訴が棄却されている。
 判決によると、北九州市は2003年度まで、国の基準に従い、月額1万7930円を老齢加算として上乗せ支給していた。しかし、厚生労働省の専門委員会が03年12月、老齢加算を「70歳以上に老齢加算に見合う特別な需要はなく、廃止の方向で見直すべき」との中間とりまとめを発表。これを受けて国は廃止を決め、同市は05年度末に加算金の支給をやめた。
 古賀裁判長は「中間とりまとめでは、『高齢者世帯の最低生活水準が維持されるよう検討が必要』『生活水準が急に低下しないよう、激変緩和措置を講じるべき』との意見が付けられていたが、わずか4日後に廃止が決められており、厚労相の検討は十分とはいえない」と指摘。「国の基準改定は、社会通念上著しく妥当性を欠いている」とした。
 1審・福岡地裁判決は、「老齢加算の廃止で、原告らは生活の各方面で制約を強いられたが、『最低限度の生活水準』を下回っているとまでは言えない」とし、請求を棄却した。
 今回の高裁判決を受け、北九州市保護課の守口昌彦課長は「厚労省などの指示を仰ぎ、今後の対応を決定したい」とコメントした。
 ◇老齢加算金=「高齢者は咀嚼(そしゃく)力が弱く良質な食品が必要で、暖房などの出費もかさむ」として1960年に創設。70歳以上の生活保護受給者に上乗せ支給されてきた。金額は最高で月額1万7930円。だが、年金改革や経済情勢の変化を受け、厚生労働省が廃止を決定。2004年度以降、段階的に減額し、05年度末に全廃した。同年度の対象者は約31万人だった。
(2010年6月14日20時39分 読売新聞)

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