2008年11月28日金曜日

年金記録の改ざんは組織的、調査委が報告書

 厚生年金記録の改ざん問題で、舛添厚生労働相直属の調査委員会(委員長・野村修也中央大法科大学院教授)は28日、社会保険事務所が組織的に改ざんに関与したとする内容の調査報告書を公表した。

 職員約1万5000人へのアンケートで不正への関与を認める証言を多数引き出しており、「(証拠を)シュレッダーで破棄した」と隠ぺい工作を認めた職員もいた。報告書では社会保険庁について「無責任な管理」と断罪。厚労省の監督責任にも言及した。同庁は報告書の内容を精査した上で、今後、関係者の処分を検討するとみられる。
 報告書によると、社会保険庁が、全国の社保事務所に改ざんのやり方を書面で指示した事実は確認されなかった。しかし、各地の事務所内では、保険料滞納の事務処理過程で所長ら複数の管理職が決裁を行い、会議で把握するなど、相当数の改ざん事例が認識されていた、と結論付けた。
 社保庁や社保事務所の全職員ら約1万5000人を対象にしたアンケートでは、153人が「不適正処理に関与した」とし、190人が「他の職員が不適正処理を行っていたことを知っていた」とした。ただ、調査委は、質問の意味を正確に理解せずに回答し、実際の関与の有無までは判断できないケースなども含まれているとしている。
 改ざんのパターンについては、〈1〉職員が虚偽の書類を自ら作成した〈2〉職員が事業主に虚偽の届け出方法を教える〈3〉不適正な訂正処理であることを認識しながら見逃す――などの類型に分類。一部の社保事務所では「(改ざんが)仕事の仕方として定着していた」と指摘した。
 職員が積極的に関与した〈1〉のケースでは、書類の控えを事業主に返さないようシュレッダーで処分したり、倒産で事業主が行方不明になったのに三文判を買って書類を偽造したりした手口も明らかになった。
 改ざんの時期については、バブル崩壊と歩調を合わせるように1991年ごろから増え始め、93~95年と98年に大量に改ざんされて、その後減少した。都道府県別では、埼玉、東京、愛媛などで多かった。また、時効が成立していなければ背任罪などにあたる可能性があった事例が複数確認されたという。
 記者会見した野村委員長は「この報告を基に社保庁で内部調査し、懲戒処分を検討すべきだ」と述べた。同庁は「精査して速やかに対応したい」としている。 (2008年11月29日01時39分 読売新聞)

年金記録改ざん「組織的」と認定 厚労相の調査委
 厚生年金の記録改ざんへの社会保険庁職員の関与を調べていた厚生労働相の調査委員会(座長・野村修也中央大法科大学院教授)は28日、一部の職場では現場レベルで組織的に改ざんをしていたと認定した。
 職員の証言や職員アンケート、厚生年金の支給額の算定基礎となる標準報酬月額の記録が改ざんされた可能性が高い約6万9千件の分析などをもとに、総合的に判断した。
 報告書によると、「上司からの暗黙の指示と了解があった」「(改ざんの)やり方は徴収課の先輩から受け継いだ」「滞納件数を減少させるプレッシャーから、年度末は改ざんが増える」などの証言があった。97%の約1万4500人が回答したアンケートでは、153人が年金記録の不適正処理に「関与したことがある」、190人が「他の職員が行っていたことを知っている」と答えた。
 さらに約6万9千件の分析からは、対象事業所数が計4万2千で、うち2万9千事業所では改ざんされたのが1人分のみだったと確認された。
 こうしたケースは、保険料の滞納を減らすため、事業主と社保事務所が合意の上で、事業主1人だけの標準報酬を違法に引き下げた可能性が高い。改ざんで将来の年金額が下がるのは事業主だけのため、一部の社保事務所でこのタイプの改ざんが定着していたと「組織性」を指摘した。埼玉、東京、愛媛の各都県で多く、時期的には93~95年に集中していた。
 多人数のケースでは改ざんが従業員の記録にも及んでいた可能性が高いと見ている。
 調査委は「事業主だけではなく従業員の記録も勝手に改ざんしたケースや、長期間にわたって極端な引き下げをしていたケースは悪質」として、職員を懲戒処分にすべきだと指摘したが、時効などの問題から刑事告発は見送った。
また、85年の法改正で厚生年金の適用対象を零細事業所まで広げたことで保険料の滞納が増えると予想できたのに適切な対応をとらなかったとして、厚労省幹部についても「現場任せの姿勢は無責任」と指摘した。

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