ビザ、倉田議員元秘書関連のみ発給 類似申請は却下 2008年10月19日3時1分
総務副大臣の倉田雅年衆院議員(69)=自民、比例東海ブロック=の元公設秘書(59)が運営していたとされる「未来チャリティー実行委員会」が絡んだフィリピン人女性らの入管法違反事件で、他の団体が同じ手法で申請したビザは発給されていないことがわかった。未来チャリティーが、慈善名目で女性の短期滞在ビザの申請を始めた07年春以降、この手法をまねたビザ申請が相次いでいた。
興行ビザでなく慈善名目の短期滞在ビザを申請する手法で、実際にビザ発給を受けたのは、未来チャリティーだけだった。法務・外務両省は、この点を「未来チャリティーの件は書類に問題がなかったからだ」と説明している。
元秘書は、日比両国の政官界に独自の人脈を持つとされる。慈善名目で来日した女性をパブに派遣する仕組みについて、元秘書は「支援者から倉田先生に話があり、先生から『調べてやれ』と言われ、自分が役所と相談しながら法に触れないような仕組みをつくった」と証言している。
法務・外務両省の関係者は、元秘書と倉田氏から未来チャリティーへのビザ発給をめぐって働きかけがあったと証言しているのに対し、倉田氏は否定している。
フィリピンパブで働く女性については、米国の「人身取引報告書」(04年)が日本を要監視国に指定。「人身売買の温床」との批判が高まり、法務省が興行ビザの発給要件を厳格化。短期滞在ビザを担当する外務省も若いフィリピン人女性の入国審査を強めていた。
こうした中、未来チャリティーは、フィリピン・レイテ島の土砂災害(06年)の復興支援名目のチャリティーコンサートに出演させるとして07年春から、興行ビザでなく観光用などと同じ90日の短期滞在ビザを取得した女性を多数入国させた。法務省の許可で6カ月まで滞在延長したケースもあった。女性たちは比大使館主催のコンサートなどに出演する一方、浜松市などの5店舗に派遣されていた。
今年3月、5店舗の一つだった「フォーカスJ」(東京・歌舞伎町)について、雑誌「週刊プレイボーイ」(集英社)が「フィリピン援助の革命的システム誕生で外国人パブ『冬の時代』は終わるのか?」と題する記事を掲載。「女性たちはチャリティー目的で来日しており、給料を払っておらず、お客さんからもらうチップが収入となる」などと記述したうえで、違法ではないというオーナーの声を紹介した。
この記事などで未来チャリティーの手法が知られると、類似のビザ申請が続出。しかし、これまでに発給された例はなく、パブ経営者らからは「なぜ未来チャリティーだけが認められるのか」との不満の声が上がっているという。
これに対し、外務省は「未来チャリティーは当初、大使館主催のコンサートに出演していたので短期滞在ビザを発給した。書面もきちんとしていた」。法務省は「チャリティーとは言っても、実態がないものは当然、認められない」と説明する。しかし、静岡県警などは、未来チャリティーが関与した女性たちも、実際には、帰国後に報酬を受け取る契約を結ぶなど、不法就労にあたるとみている。
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