2011年8月16日火曜日

財産は絶対に金だ と 官僚・世界の財政トップ

通貨に不信任投票か 金買いに走る官僚OB  2011/8/16

   金の世界にいると「できれば見たくはなかった」ことを見てしまうことが多い。
金を買う人たちの欲望があらわになる場面に居合わせるからであろう。


 筆者は団塊の世代である。
金高値更新の折り、知り合いから退職金で金を買いたいのだが、という相談をしばしば受ける。

 その相談者で最も熱心な人たちが、元霞が関、元永田町の人種である。

 日本国債の“やばさ”を身を持って感じてきたひとたち。
「日本の公的債務は900兆円を超す。自分はその帳簿を見てきた。 まともに返せる金額ではない。
結局、累積財政赤字を積み上げた国は通貨増発に走る。これは歴史が示してきたことだ」と淡々と語る。

 「だから自分は、いくら円高といわれようが円は持ちたくない。
君は(筆者のこと)ドルは刷れるが金は刷れないと書いた。円も刷れるが金は刷れない。
私は金を選択する」。筆者の背筋がヒンヤリするエピソードだ。
「通貨の番人」をやってきた人たちが、「通貨への不信任投票」ともいえる金買いに走る。

 次元は違うがこういうエピソードもある。

 FRB(米連邦準備理事会)前議長のグリーンスパン氏。現在でも講演に引っ張りだこ。
講演料は10万ドル近くといわれる。あるヘッジファンドのカンファレンスで講演後、
控え室で主催者が尋ねた。「先生、講演料をお振り込みしますが、どの通貨にしましょうか。
米ドル、ユーロ、円?」。そこで彼はポツリ「ゴールド」と答えたという。
米CNBC「クロージングベル」の看板キャスター、マリア・バルティロモが番組内で実話として披露した話だ。

   半分はグリーンスパン氏特有のユーモアであったであろうが、半分は本音かもしれない。
90年代、欧州の中銀が相次いで金大量売却に走ったとき、
上院銀行委員会の聴聞会で「米国は金を売却しないのか」と聞かれて
「Gold is the ultimate currency(金は究極の通貨ゆえ売らない)」と明言した人物である。


 このエピソードには更にヒンヤリする。基軸通貨ドルの「通貨の番人」として18年間、
金融界に君臨し米国経済の裏も表も知り尽くした男が、
あえて米ドルを選択せず、その対極にある金を指名する。

 筆者の知り合いの例との共通項は、権力や情報の中枢に近くいた人間ほど
金に真剣に注目するということだ。
筆者の友人でも商店街のオヤジたちが金に示す興味は軽い。ブームにはしゃぐ感じだ。
額にしわ寄せ相談に来ることはない。

 ソブリンショックで金が史上最高値を更新中だ。
ソブリンリスク回避マネーが金へ流入と説明される。
そのマネーの典型はソブリンの世界に働いた人たちの資産運用であった。

 欧州ではトリシェECB(欧州中央銀行)総裁が今年いよいよ引退する。
おそらく彼も講演に引っ張りだこになろう。果たして彼はユーロを選択するであろうか。






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