2008年6月8日日曜日

金、インフレヘッジ再注目と千ドル目前で需要失速

金、インフレヘッジで再注目
商品部 (6月10日)
 最大の買い材料だったドル安の一服で上値の重い展開が続いている金相場。そんな中、「インフレに強い」という金の特徴に改めて注目が集まりつつある。
 原油や食料価格の上昇で世界的にインフレ懸念が強まっているためだ。金の国際相場は昨年秋以降、米国の相次ぐ利下げによるドル相場の下落に連動する形で騰勢を強めてきた。しかし、米利下げは4月でひとまず打ち止めとの観測が広がり、ドルの下落トレンドにも歯止めがかかった。5月以降のニューヨーク先物相場(期近)は850―900ドル程度でもみ合う。
 ただ、5月下旬には900ドルを超えて騰勢を強める場面もあった。ニューヨーク原油先物(期近)が1バレル130ドルを超え、インフレ懸念が改めて意識されたためだ。
 インフレは世界的に進行している。ユーロ圏の5月の消費者物価上昇率は前年同月比3.6%とユーロ導入後の最高水準に再び上昇。米国も卸売物価上昇率が前年同月比で6%を超えている。新興国はより深刻で、ロシアやベトナムなどは2ケタの消費者物価上昇率を記録している。
 日本はまだ物価上昇率が低いものの、インフレへの関心は高まっている。金の調査機関であるワールド・ゴールド・カウンシルは、日本の年収1000万円以上(世帯ベース)の金投資家を対象に定期的なアンケート調査を実施している。従来の調査では金を保有する理由として「無価値にならない」という回答が最多だったが、今年3月の調査では初めて「インフレに強い」という回答が上回った。
 インフレに対抗するためのいわゆる「インフレヘッジ」の目的で投資する人が増えつつあるわけだ。インフレに強いのは実物資産に共通する点。しかし、無国籍通貨としての性格を持つ金はインフレ時に特に人気を集めやすい。「年後半に米国でインフレ懸念がいっそう強まる」とみる市場関係者は多く、金相場の動向にも影響を与えそうだ。

金、1000ドル乗せ目前での需要失速
商品部・(2月19日)
 金価格が年明けから騰勢を強め、ロンドン渡しの現物は1980年1月に付けた1トロイオンス850ドルの過去最高値を更新した。900ドルもあっさり超え、一時は1000ドル乗せも時間の問題といわれた。だが高騰の反動で宝飾品など実需が冷え込んでいることが浮き彫りになった。
 金の調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)のまとめによると、2007年10―12月期の世界需要は843トンで前年同期を17%下回った。07年通年では4%増えたが、1―9月までに13%伸びていた増加基調からは一転した。
 最大消費国であるインドの減速が大きい。1―9月の需要は前年同期比40%増えたが、10―12月期は同64%減と急ブレーキがかかった。インドでは今年1月の輸入量も5トンと前年同月の8%にとどまったという。値動きの荒さが敬遠され、買い控えが広がった。
 米国も10―12月の需要は17%減の110トンと失速した。サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題による不安心理が、堅調だった高額品の消費にも及び、宝飾品の購買意欲が落ち込んだ。この結果、通年での金消費量は中国に抜かれて世界3位に転落した。
 7―9月期のロンドン金価格の平均は680ドル。10―12月期は786ドル。800ドル近辺の水準は、宝飾品用途としてはまだ認められていないといえる。
 昨年からの原油や貴金属など商品価格の高騰は、米国経済が減速しても新興国が補うというデカップリング(非連動)論が一つの根拠となっていた。ただ年明け後も大手金融機関の損失計上が続き、雇用や消費の悪化を示す指標が出るに及び、米国に合わせて新興国経済も減速するとするリカップリング(再連動)論ががぜん現実味を帯びてきた。
 米国景気が後退すれば、対米輸出に支えられた新興国経済にも影響が及ぶ。株や債券への不安を背景に分散投資先としての金需要は高まる可能性があるが、宝飾品需要の落ち込みが遠からず注目されよう。逆にサブプライムローン問題が解決に向かえば、信用不安は一巡、金に流れていた資金が株式市場などに逆流することもあり得る。
 金市場関係者の間では「年内に一度は1000ドルを見ないと収まらない」というのが共通認識となっている。ただ実需の急減速は、仮に大台を付けても定着は難しいことを暗示しているといえそうだ。

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