長崎や広島で被爆してがんなどの病気になった人たちが全国各地で国に原爆症と認定するよう求めている集団訴訟で、長崎地方裁判所は、23日、以前の国の認定基準を批判したうえで、原告27人のうち20人を原爆症と認定するよう国に命じる判決を言い渡しました。
この集団訴訟は、長崎や広島で被爆してがんなどの病気になった人たちが「国の原爆症の認定基準が実態と合っていない」として、全国各地で起こしているもので、長崎地方裁判所では、5年前から27人が国に原爆症の認定を求めてきました。23日の判決で、長崎地方裁判所の田川直之裁判長は「国の認定基準の基になっている残留放射線の推定には問題がある。被爆直後の医師の観察は、残留放射線や放射性物質を体内に取り込んで起きる内部被ばくによって、被爆者が健康や生命に大きな影響を受けていることを物語っている」と指摘して、以前の国の認定基準を批判しました。そのうえで、原告ひとりひとりの被爆状況やその後の行動、それに髪の毛が抜けるなどの急性症状を総合的に判断し、原告27人のうち20人を原爆症と認定するよう国に命じました。しかし、残りの7人は、被ばくした量が小さいか、ほかに病気の原因があるとして、原爆症と認めませんでした。この集団訴訟では、国の敗訴が相次いでいて、国は、ことし4月、原爆症の認定基準を緩和しました。しかし、今回の判決では、新しい基準でも積極的に認定する対象からはずされた慢性肝炎などの病気の原告も原爆症と認めていて、今後、認定基準の是非の論議に影響を与えそうです。判決について、原告団の森内實団長(71)は「原告全員の勝訴を期待していただけに複雑な心境だ。棄却された7人のために今後も一生懸命戦っていきたい」と話していました。また、長崎原爆被災者協議会の山田拓民事務局長(77)は「なぜ認めない人が出たのか理解できない。これまでの一連の訴訟の中では最低の判決ではないか」と話していました。原告の1人で両足が不自由な小幡悦子さん(79)は「認められて、ひとまず安心しました。苦しんでいるほかの人も認めてあげてほしい」と話していました。一方、厚生労働省は「国の主張が一部認められ、一部は認められなかったと聞いている。今後の対応は、判決の詳細を確認のうえ、関係省庁と協議して検討したい」という談話を出しました。
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