2008年7月19日土曜日

ザ厚労省 舛添厚労省大臣

舛添厚労相「長寿国維持なら消費税引き上げを」
コメント閲覧(0件)コメント投稿/更新日:2008-07-19
 年金記録問題、後期高齢者医療制度を巡る混乱、薬害C型肝炎——。なぜ厚生労働行政は混乱をきわめているのか。昨年8月の就任以来、対応に追われ続けた舛添要一厚労相。今回の連載にあわせて、心の内を語ってもらった。 日経ネットPLUSではインタビューの詳細を伝える。
——7月末に高齢者支援などを盛り込んだ「五つの安心プラン」を打ち出します。その狙いは。 
「安心プランは福田康夫首相の提案だ。年金記録問題をギブアップを示唆するような部分は書き換えるよう要請したが、基本的には首相がしかけた。就任以来、首相も私も前政権の尻ぬぐいをやってきた。『骨太の方針2008』でも社会保障の話だけは別建てで特記したように、前向きな政策に打って出る」 「五つのうちの高齢者支援は後期高齢者医療制度の大混乱の反省に立つ。医師不足など医療問題への対応もある。子育て支援も入れる。
さらに日 雇い派遣はやめようと申し上げた。そして最後に厚労省改革。外部の人間を入れて総点検をしたい」 「福田康夫首相が官房長官だったときに小児科医を増やそうと言ったのに全然増えていない。5年間何をやっていたのか。そういう問題意識があったから医学部定員削減を決めた97年の閣議決定をひっくり返すことができた」 
——厚生労働行政はなぜ混乱が目立つのか。 
「小泉改革のマイナスの側面がでてきている。競争と安定のかみ合わせが悪くなっている。抜群に才能を持っていて健康なスーパーマンみたいな人でも60歳をすぎて病をわずらって寝たきりになる場合もある。一人の人生にはいつ光りが差し、影が差すか分からない。厚生労働省は影の部分を手当てする役所。市場経済原則から落ちた人を救わなければいけない。年金だけでぎりぎり生きている人の面倒を見なければいけない。影の部分に焦点が当たればたたかれるのは当然だ」
混乱が目立つ厚生労働行政(東京・霞が関の厚生労働省) 「小泉改革はさびついたものを切り落とす意味はあった。だが効率、競争を促した市場経済ですべてバラ色にはならなかった。バラ色じゃないから富を権威的に配分する政府がいる。本当は突然の首相交代でなければ明確に政策転換すべきだった。だから私自身は完全に政策転換をやっている」 「働き方を自由にしていいじゃないかというのは自由競争の論理であって人間の論理じゃない。現に結婚できない労働者だって出ている。これは政府の政策として改めるべきだ。障害者をどう救うか、難病にかかった人をどう救うか。25億円しかない難病対策費を4倍にしたのは政策転換の典型だ」 ——いま必要なのは「負担の調整」だ。 「富が増えることを前提にすれば、分配は簡単な話だ。例えば、独立行政法人つくって天下り、特別会計を肥大化させる…。年金記録の管理も名前を間違ったって30年後ならどうにでもなるという高度経済成長の発想だ。つまりデフレ下における政策立案ができていない」 「例えば英国はうまい方法をとってきた。サッチャー改革を小泉改革とすれば、いま必要なのはブレア的な改革。医療費はブレア前首相の時に倍増させて5年で立て直した」 「日本では医療費を抑制しようとする財務省との力関係を変えなければいけない。今年は『骨太の方針』で大田弘子経済財政担当相ともやりあった。どうにか社会保障と医師不足は削減対象の例外だと書くところまでいった」 「次に議論しなければいけないのは消費税。進んだ福祉社会であるスウェーデンや欧州連合(EU)諸国は軒並み20%前後の消費税を国民が負担している。本来は安倍政権から切り替わったときに負担を求める政策転換をやらなければいけなかった」 ——そもそも日本では負担の議論が入り口で止まってしまう。 「一部の厚労族議員が政策をまとめるプロセスは変わってきた。薬害C型肝炎問題も政治主導で決断した。首相が安心プランをきちんとや
4月にスタートした後期高齢者医療制度に対しては反対の声が広がった(東京・江東区役所の相談所)るから消費税を上げますと言っても選挙に負けるとは思わない。む しろ逃げたほうが政権を失う。おれは参院議員で選挙が無いから気楽だとの批判も受けるが、国民は変わってきている」 「消費税5%で、世界最高の長寿国になっているのは奇跡。だがもう無理だ。だからこのまま長生きしたいなら6、7、8%と税率をあげていくしかない。そのために医療政策を充実させますから負担もしてくださいと言っている。自民党はもっと(医師不足などで疲弊している)地方の意見を聞いたほうがいい。新宿で街頭演説なんかしちゃいけないんだ」 ——厚労省の政策は現場感覚とずれていると言われる。 「政策に無駄が無いことはない。そこはチェックする。ただ見直そうとすると、『私のしごと館』(京都府精華町)のようなハコモノをやめましょうという発想に集中してしまう。そうではなくソフト面、政策面での無駄を見直そうということだ。いらない規制や手続きがあるはずだ。そこにメスを入れるのが厚労省改革だ」 「なぜ医師や薬剤師などの資格を持つ技官にメスを入れ、聖域無く見直しを進めるのか。医療は医療費、医者の地域ネットワークなど様々な問題がある。が、事情は地域によって違う。拠点病院が無くても産科のネットワークがうまくいっている宮崎県のような例もある。先日、栃木県の大田原赤十字病院を視察したが、そこではこの病院と開業医がネットワークでつながっている。赤十字病院で急患をみたら、他の病院は赤十字病院のすべてのデータを読み出してみることができる。大病院に患者を集めてベッドがないと騒いでいるが、工夫次第で解消できる。だが技官はこういうことを考えたことがない」 「医政、健康両局長はGHQ(連合国軍総司令部)のときから医師が就いているが、行政官として優れているとは限らない。文官がなってもいい。ただその下には医者がいたほうがいいかもしれない。そういう見直しをやる。省改革の発端は年金記録問題と後期高齢者医療制度だが、私の問題意識はそれ以上だ」 ——社会保険庁の後継組織である日本年金機構は懲戒処分を受けた者を採用すべきではないとの厳しい意見が自民党内などで強まっている。  「感情的には分かるが、十分な知識無く言っている側面もある。年金機構に採用しなければ、厚労省本省で採用しなければならない。みのもんた氏は朝のテレビで 『なぜ首を切らないんだ』というが、彼は法律上、公務員の首を切れないことを知らないだろう。分限免職という制度はあるが、正当な理由が無い限り、訴訟が あったら負けてしまう。裁判で負けてもいいから首を切れというのは無責任だ。公務員を守らなければ中立的に働けなくなる」 「厚労省がまとめた年 金機構の基本計画は懲戒処分を受けた職員は1年の有期雇用でまず受け入れる。その1年で心を入れ替えて能力を発揮してもらえるかを判断する。これは法律も勘案した上での厳格なルールだ。誰が見ても優秀だったら正社員になれる道は残した。そうしないと、組織への忠誠心を失うからだ。はじめから辞めさせられる のが分かっていたら誰が一生懸命働くのか」 ——舛添厚労相はテレビメディアに批判的だ。 「みのもんた氏など代表的なテレビの顔に有権者 がマインドコントロールされてしまっている。政治がそれに乗ったら大衆の喝采を受けるかもしれないが、悲しむのも大衆だ。例えば年金機構で民間人を 1000人採用することになっているが、自民党は2000人に増やせという。だが一気に2000人もとれないだろう。足りなかったら結局、年金業務が行き 詰まる。知識の無いアルバイトを雇い、記録問題にあたることになる。泣くのは国民だ」 「自民党は選挙受けするために主張しているが、私は国民一人 ひとりのためにやっている。選挙に勝つか負けるか議論を進めるのはレベルの低い話だ。それは民主党にも言いたい。合理的に考え、政策にならないのが政治と もいえる。だが政策実現までには正論を吐かなければだめだ。テレビ民主主義にはそれがない」 ——年金記録問題の終わりが見えない。  「記録問題も薬害C型肝炎も時期を決め、そこを目指して解決に取り組んだ。だがその決意を『公約だったはずだ』と民主党などは批判する。段取りを決めずに取り 組んだら物事は進まない。8億5000万件の紙台帳記録のコンピューター記録の照合だってサンプル調査、システム整備と段取りを踏んで進めているだけだ」  「大事なのは国民の税金を無駄に使わないことだ。カネにも人にも制約がある。だから優先順位を付けることに意味がある。紙台帳の照合作業も受給者、加入者 の順位をつけてやる。民主党の長妻昭衆院議員は『すべて照合しろ』というが、カネを無尽蔵にかけていいのか。私が国民の立場なら反対する」 「10月まで記録漏れを注意喚起するねんきん特別便を送付するが、それまでに収束感は出てくるだろう。だがその後に記憶を思いおこす人もいる。だから年金機構に引き継ぐ過程で簡易に記録を確認できる仕組みをつくる。幕引きはしない」  ——7月の人事で主要幹部はほぼ留任。メッセージが伝わってこない。 「省内を把握していないのに大向こうを狙う人事はできない。とりあえずは安全運転。今回は継続性を重視し、来年は信賞必罰にする。改革推進室や作業委員会など外部の人を入れたチェックシステムを設けた」 「さらに組織改革もある。医薬品などの審査・承認を一手に担う米食品医薬品局(FDA)に似た組織をつくれば医薬食品局は必要ないかもしれない。紙と鉛筆で書くだけじゃ、砂上の楼閣。組織を根本からつくりかえる。非常に遅く見えるかもしれないが着実な手法だ」 
——厚労相が「役人に丸め込まれている」との批判もある。  「もちろん小泉純一郎元首相のように抵抗勢力をつくったほうが言い場合もある。ただ本当に物事を動かそうとするなら協力したほうがいい。在任わずか10カ月の大臣よりも20年間働いた役人のほうが専門知識があるのは事実だ。これを使わない手はない。レールの方向性は大臣が決め、みんなで押せばいい。丸め込 まれたという人もいるが、丸め込まれても何でもいい。国民のためになれば。政治は結果責任だ」

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