2008年2月23日土曜日

48歳皇太子への各紙記事

アサヒ・コム
      皇室問題―長い目で見守りたい   朝日新聞社説
 息子夫婦が孫をちっとも連れてこない――。こんな愚痴は世間ではいくらでもある話だ。ただ、これが天皇家のこととなると、いささか事情が違う。
 天皇、皇后両陛下が、皇太子さまの長女愛子さまに会う機会が少ない。もっと会う機会をつくっていただきたい。
 このように皇太子さまに苦言を呈したのが宮内庁長官だった。
 これに対し、皇太子さまが誕生日の会見で、「できる限り心がけてまいりたい」と語った。だが、実家へ足が遠のく理由については「プライベートな事柄なので、これ以上立ち入ってお話をするのは差し控えたい」と答えを避けた。長官の発言への反発も感じ取れた。
 この話は、天皇陛下が一昨年の会見で、愛子さまと会う機会が少ないとこぼしたのが発端だ。陛下と皇太子さまがじっくり話せば解決できる問題のように思えるが、そうならないところを見ると、もう少し根が深いということだろう。
 お二人の関係がぎくしゃくしているのではないかと思われるようになったのは、04年の皇太子さまの「人格否定」発言のころからだ。皇太子さまが「雅子の人格を否定するような動きがあった」と語ったのに対し、陛下が「初めて聞く内容だ」として国民への説明を求めた。
 さらに、あるべき皇室像や公務のつとめ方をめぐり、弟の秋篠宮さまも加わって、意見の食い違いが表面化した。
 たしかに陛下の苦悩はさぞ深いことだろう。70代半ばを迎え、がんとの闘病を続けながら多忙な公務をこなす。皇后さまの体調も芳しくない。自分の後を継ぐ皇太子さまに、こうあってもらいたいという思いはたくさんあるだろう。
 一方、皇太子さまもつらい立場だ。「全力でお守りする」と雅子さまに誓ったご結婚から15年を迎えた。心身の不調に悩む雅子さまを守り続けるだけで精いっぱいなのかもしれない。
 天皇、皇后両陛下と皇太子ご夫妻のどちらの立場に寄り添うかは、それぞれの世代や環境、価値観などによって違うだろう。週刊誌などでは、それぞれの立場からの意見や批判がにぎやかである。
 だが、こんなふうには考えられないだろうか。皇室の歴史をひもとけば、いつの世も悩みを抱えていたはずだ。皇室の中で様々なきしみがあり、いつも理想的な家族を演じてきたわけではない。
 いま憲法で日本国と国民統合の象徴と位置づけられている天皇は、多くの国民の理解と支持なしにはありえない。しかし、皇室に対して国民が期待することは時代によって変わるし、国民の家族観も親子のあり方も変化していく。
 そうした時代と社会の移り変わりの中で、伝統を後世に伝えつつ、新たな伝統をつくろうと苦しんでいるのが、いまの皇室ではないだろうか。
 長く複雑な歴史を背負ってきた皇室である。ここは穏やかな日々が戻ることを、長い目で見守っていきたい。  

  皇太子さま、48歳に 参内「心掛けて参りたい」  2008年02月23日05時55分
 皇太子さまは23日、48歳の誕生日を迎え、これに先立って東京・元赤坂の東宮御所で記者会見した。長女・愛子さまが天皇、皇后両陛下を皇居に訪問する「参内(さんだい)」の少なさに言及した羽毛田(はけた)信吾・宮内庁長官の発言を受けて、「(参内を)できる限り心掛けてまいりたい」と語った。「家族のプライベートな事柄」だとして、それ以上の詳しい説明はなかった。
愛子さまと両陛下の交流については、天皇陛下が06年12月、愛子さまと会う機会が少ないのは「残念なこと」と発言。皇太子さまは昨年2月、「お会いする機会を作っていきたい」と答えた。だが、羽毛田長官は今月13日の会見で、「ご参内の回数は増えていない」「発言なされたからには実行を伴っていただきたい」と異例の指摘をしていた。
 会見で皇太子さまは、長官発言への感想を尋ねられた。「両陛下の愛子に対するお心配りは、本当に常にありがたく感謝を申し上げております」と述べるにとどまり、家族内の問題として「立ち入ってお話をするのは差し控えたい」と説明した。
 療養中の雅子さまについては、公私を問わず活動の幅を広げるよう努力していると最近の様子を紹介。「今後ともしっかりと支えていきたい」と思いやりを示した。春に小学校に入学する愛子さまには「新しい環境の中での生活を元気に始めてくれることを願っています」と語った。
 ■ご一家での訪問、1年間で十数回
 羽毛田長官が「苦言」を呈した皇太子ご一家の参内の少なさ。一体どれほどの回数だったのか。
 朝日新聞の取材によると、昨年12月までの1年間で、皇太子さまが愛子さまを連れて参内したのは13、14回はある。大半は皇室行事に伴ったり両陛下側が招待したりしたもので、皇太子さまの発意による訪問は1月、3月、8月の3回だった。
 一方、年末年始に続いた皇室行事には、雅子さまは体調を考慮して大半を欠席した。「大正天皇例祭の儀」や「元始祭の儀」などの祭儀のほか、「講書始の儀」「歌会始の儀」といった恒例行事は皇太子さまだけが参加した。
 元日の「新年祝賀の儀」は午前だけ参加したが、東宮御所に戻った後に両親らを東宮御所に招いたことが報道され、宮内庁内でも批判の声がくすぶった。
 私的な外出は活発だった。12月には都内で買い物やイルミネーションの鑑賞、ミシュラン東京版の三つ星レストランで夕食。1月にも東京・高輪の水族館をご一家で楽しんだ。こうした動きは週刊誌やネットで批判的に取り上げられた。
 米AP通信は今月初め、都内のレストランでの食事など雅子さまの私的活動に関する記事を配信。英国のインディペンデント紙やタイムズ紙も独自に雅子さまを特集。外国メディアの報道がご一家の動向を世界に発信し、反響が広がった。
   ◇
「愛子さまと会う機会」をめぐる発言
06年12月 天皇陛下「残念なことは、愛子は幼稚園生活を始めたばかりで、風邪を引くことも多く、私どもと会う機会が少ないことです。いずれは会う機会も増えて、うち解けて話をするようになることを楽しみにしています」
07年2月 皇太子さま「天皇陛下の愛子に対するお気持ちを大切に受け止めて、これからも両陛下とお会いする機会を作っていきたいと思います」
08年2月 羽毛田長官「事実としてみます限り、ご参内の回数は増えていない」
   ◇
 ■もっと語っていただきたい
 〈解説〉天皇と皇族方に仕える立場の宮内庁長官が、皇太子さまに、家族関係で苦言を呈するという前代未聞の事態はなぜ起きたのか。
 関係者によると、長官は昨年暮れから何度か東宮御所に足を運び、皇太子さまと話し合いを重ねていた。
 雅子さまの「適応障害」の療養は5年目。依然として主治医の詳しい説明や見通しは示されない。皇太子さまと雅子さまに厳しい意見が宮内庁に寄せられた。国内の雑誌だけでなく欧米紙でも大きく報じられた。
 ここ数年、天皇陛下は皇室の基本的な姿勢について皇太子さまや国民に様々にメッセージを発してきた。しかし皇太子さまからは、納得の行く説明がなく、とりわけ皇太子さまが自身の言葉の重みを感じているのかどうかと心痛は深まるばかりだったという。
 皇太子家を支える東宮大夫を飛び越えて、宮内庁の長官が皇太子さまと直接話し合うこと自体が異例だ。それでも、皇太子さまには事態の深刻さが伝わらなかった。天皇陛下の心痛や危機感に思いが届かない様子だったとみられる。異例の「苦言」会見に長官が踏み切ったのは、思いあまってのことだったようだ。
 会見で長官は「ご自身のご発言は大切に」「実行が伴うように」と6回繰り返した。真意は「『綸言(りんげん)汗の如(ごと)し』と身を挺(てい)して基本姿勢をいさめることにあった」と複数の関係者は言う。天子の言葉は糸のように細くとも、汗のように二度と取り返しがつかない。中国の古典から生まれた、君主への戒めである。
 非難を覚悟の長官発言を受け、今回の誕生日会見は注目を集めたが、皇太子さまは「家族内のこと」と繰り返してコメントを避けた。しかし、問われているのは「皇居と東宮の内輪もめ」といったレベルのことではなく、天皇と皇室のあるべき姿をめぐる根の深い問題である。
 皇室内の不協和音を望む人はいないだろう。両陛下とご夫妻で対話が進んでほしい。皇太子さまには今後も誠意ある言葉と行動でこたえ、説明責任を果たし、自らが描く将来の皇室像を積極的に語ることを期待したい。(編集委員・岩井克己)
 
  この記事の関連情報
   皇太子さま会見全文〈上〉 2008年02月23日05時55分
【問1】この一年間、殿下にとって印象深かった出来事を幾つか御紹介ください。殿下は昨年、ポリープの切除手術を受けられました。退院の際に「健康の大切さを実感した」と述べられましたが、健康維持のためにどのようなことを心掛けていらっしゃいますか。皇室では、天皇陛下がホルモン療法を続けられ、皇后さまも今年初めに体調を崩されました。健康に不安を抱えられている両陛下を支えられるお気持ちもお話しください。
【皇太子さま】この一年を振り返ってみますと、国の内外で実に様々なことがあったと思います。
 国内にあっては、新潟県中越沖地震、能登半島地震などの自然災害に加えて、食の安全、年金、社会格差など国民生活の安全と安心にかかわる問題が私の印象に残っております。特に食の安全は生活の基本であり、関係者の努力により、これらの問題が解決に向かうことを心から願っております。
 国外にあっては、イラクやパレスチナ情勢など中東地域が依然として不安定であることや、様々な地域での紛争の問題なども心配です。また、世界的に地球環境問題がより重要性を増してきており、昨年はアメリカのゴア元副大統領やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)にノーベル平和賞が贈られたこともそのあらわれであると思います。
 私のこの一年間の公務の中でも特に印象に残っているものとして、第1回アジア・太平洋水サミットに出席したことが挙げられます。これは、国連事務総長からのお話で、国連「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁に就任して最初の活動でもありました。水の問題は、世界が直面している地球温暖化を含む環境問題や資源問題の重要な課題の一つです。今年も、名誉総裁としての立場で、水問題に関する様々な活動に取り組んでいきたいと思っております。
 もう一つ印象に残っているものとして、昨年11月に静岡県で行われ、名誉総裁として出席したユニバーサル技能五輪大会があります。この大会は、世界各国の若者が技能を競う技能五輪国際大会と、障害のある人々が技能を競う国際アビリンピックという伝統ある二つの大会が、史上初めて同時に開催された大変意義深い大会であったと思います。世界各国から集まった若い人々が障害の有無にかかわりなく、ものづくりに熱心に打ち込んでいる姿には感銘を受けました。科学技術の進歩が著しい中で、殊に若い人々が日本のものづくりを支えていくということは、極めて大切なことと思いました。
 国際交流の面では昨年の7月、モンゴルを訪問したことも強く印象に残りました。日本とモンゴルとの友好関係がいろいろな分野で、今後更に発展することを願っております。
 健康に関する御質問に対してですけれども、昨年は十二指腸ポリープの手術で入院しました。お陰様で今は全快しており、今までどおりに公務をこなしております。短い入院期間ではありましたが、お医者様や看護に携わる方々の献身的な治療には、本当に頭が下がる思いがしました。また、内視鏡を使用しての最先端の医療に触れる機会にもなりました。
 健康維持のために心掛けていることについてですけれども、生活の様々な面で留意しています。食生活はもとより、適度な運動も健康維持の上では大切だと思います。運動としてはテニスやジョギングが日常での運動になります。殊にジョギングは、短い時間で良い運動になりますし、雨や雪などが降っていなければ行うことができます。私自身は一回のジョギングでこの赤坂御用地の中を2周から3周するのですけれども、先月1か月間で、100キロメートルを超える距離を走りました。
 今月17日に行われた東京マラソンでの参加者の多さや、皇居の周りを走るランナーの多さを見ても、国民の多くがランニングやジョギングを楽しんでいることがよく分かります。ジョギングは、無理をしなければ健康維持にとても役に立つと思います。もちろん、テニスや、回数は少ないですけれども、登山やスキーも私の健康維持には欠かせません。
 両陛下の御健康に関しては、私は、両陛下が御健康でお元気にお過ごしになられますことを常に心から願っております。そして、いつでも必要なときには、皇太子として天皇陛下をお助けできればと思っておりますし、どのようにお助けするのが最もお力になれるか常に考え、努めていきたいと思っております。
【問2】今年、皇太子同妃両殿下は御成婚15周年を迎えられます。15年間を振り返り、印象に残ったこと、苦労されたことなどをお聞かせください。現在療養中の妃殿下の御回復状況と、本格的な御公務復帰の見通しはいかがでしょうか。最近、妃殿下の私的な外出が増えていますが、殿下はどのようにお考えですか。
【皇太子さま】もう結婚15周年かと、年月のたつのは早いものと思います。結婚10周年の際に雅子と共に詳しく感想を述べておりますので、その後の5年間に限らせていただきますと、何より大きいのは愛子が成長し、3人でいろいろな楽しみや喜びを見いだすことができることです。他方で雅子が病気を患い、現在も治療中であることも大きな出来事でした。雅子の現在の状況は、昨年の誕生日に際して、本人の感想と東宮職医師団の見解に述べられていますように、少しずつではありますけれども快方に向かっていますが、なお治療を必要としております。雅子は、依然として体調に波がある中、自分でもいろいろと工夫をしながら、公私を問わず活動の幅を広げるよう努力してきており、公務についても少しずつではありますが、頻度が増えてきています。以前に比べ、公務の後の疲れからの回復も早くなってきているようには思いますが、頑張り過ぎて疲れることなどもありますので、お医者様からは内容を慎重に考えながら活動の幅を広げていくよう指導を受けております。公務については、回復に伴って少しずつ積み重ねていくことにより、徐々に復帰していくことになると思います。現状では、公私を問わず、心の触れ合いを大切にしながら、負担の少ないところから活動の幅を広げることが治療のために必要とのお医者様の見解を御理解いただき、引き続き長い目で見守っていただきたくお願い申し上げます。また、結婚10周年のときにも申しましたけれども、雅子は、いろいろな面で私の力になってくれていますし、私も、雅子を今後ともしっかりと支えていきたいと思っております。
  皇太子さま会見全文〈下〉 2008年02月23日05時56分
【問3】殿下はこの一年間、愛子さまの御成長をどのように見守られましたか。愛子さまはこの春、学習院幼稚園を卒園し、初等科に進まれます。最近のご成長振りと、御趣味や好きな遊びなどをエピソードを交えて御紹介ください。また、幼稚園2年間の思い出と現在の御心境、小学校生活に寄せる思いも、お聞かせください。
【皇太子さま】2年間にわたった愛子の幼稚園生活も残すところあとわずかとなりましたが、この2年間で心身共に大きく成長したと感じます。幼稚園入園当初は、愛子にとって初めての集団生活でしたが、先生方の温かい御指導の下、すっかり幼稚園生活にも馴染んで、多くの友達もでき、毎日本当に楽しく通園しています。幼稚園生活では父母が子どもと共に参加する行事も、例えば運動会や参観日などですけれども、そういったものの一つ一つが楽しい出来事でした。また、愛子には幼稚園の外にあっても、入園以前からのお友達とも音楽や体操の教室などを楽しんでおり、そのようなときにも成長振りが感じられます。
 この一年間では殊に漢字に興味を持つようになり、自分でいろいろな漢字を書くようになりました。特に人の名前を書くことに関心があるようですが、中には難しい字もあります。遊びごっこでは、家族ごっこなどのごっこ遊びが、今とても好きなようです。普段は、うちの犬やカメをかわいがり、昆虫なども好きで、生き物を大切にしています。また、歌を歌うことが好きで、バイオリンやピアノにも関心を示しています。誕生日などにはいろいろと手作りのものを作って、両陛下や私たちにプレゼントしてくれます。また、愛子と一緒に手を洗っているときに、私が手に石鹸を付けている間に、水を出しっぱなしにしてしまい、愛子に水を止めるように注意されたことがあります。
 4月からは学齢に達し、学習院初等科に入学することになりますが、新しい環境の中での生活を元気に始めてくれることを願っています。皆様にはこれまで愛子の成長を温かく見守っていただいてきておりますことに感謝しております。
【問4】皇室ではこのところ、天皇皇后両陛下の御多忙な公務日程の見直しが検討課題に上っています。両陛下の公務の現状と皇室の公務分担のあり方について、殿下のお考えをお伺いします。
【皇太子さま】このことについては、以前からもお話ししていますように、すべての公務は「天皇陛下をお助けしつつ、国民の幸福を願い、国民と苦楽を共にしていく」という皇室のあるべき姿が基礎にあります。天皇陛下の御公務を拝見していると、もちろん国事行為としての御公務がおありになるわけですけれども、それに加えて、天皇というお立場であるがゆえに公平性などが重んじられて、式典や、皇居の中での外からは見えないところでのご公務なども随分おありになると思います。陛下の御年齢を考えますと、陛下のお仕事の全体の量をよく把握しながら、御公務の調整をしていくことは大切なことと思います。私としては、陛下がもう少しお休みになれる機会をお作りし、ごゆっくりしていただくことを周囲が考える必要があると思います。この辺のことは、周囲が、陛下とよく御相談しつつ、陛下のお気持ちに沿う形で事を進めていくことが大切と考えます。
【問5】殿下の御公務についてお聞きします。殿下は以前から世界の水問題に関心を持たれ、昨年はアジア・太平洋水サミットに参加されたほか、国連の諮問委員会の名誉総裁に就任されました。こうした活動を踏まえ、改めて世界の水問題についての殿下の思いをお聞かせください。水問題に関する御活動は、今後の御公務や研究活動にどう生かされますか。
【皇太子さま】最初にもお話しましたが、環境問題は今や世界共通の関心事となっていると言っていいと思います。水の問題も、今後、先進国・開発途上国を問わず国際社会が一体となって真剣に取り組んでいかなければならない最重要課題の一つです。私も国連「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁という立場で、今の自分に何ができるかということを考えていかれればと思います。水の問題は、世界が直面している地球温暖化を含む環境問題や資源問題の重要な課題の一つです。今年も、名誉総裁としての立場で水や衛生の問題に関する様々な活動に取り組んでいきたいと思っていますし、これまで以上にこの問題についての理解を深めていくつもりです。その意味でも昨年12月の第1回アジア・太平洋水サミットへの出席は、水問題について学ぶとても良い機会になりました。ヒマラヤの氷河が溶けることにより、氷河の下流域に住む人々が洪水の被害に遭うことが現に起こっていること、海面上昇に伴い太平洋のツバルなど島嶼国では水没の危機にさらされている国があること、さらに、海面の上昇は、井戸の飲み水に塩分が混入する結果を招いていることなどです。国連のまとめによれば、世界では11億人が安全な水を飲むことができず、このうちの約60パーセントがアジア・太平洋地域で暮らしており、トイレなどの衛生施設を持たない人が世界では26億人で、その70パーセントがアジア・太平洋地域で占められているということです。このような現実を直視し、皆で叡智を結集して、力を合わせて解決策を見いだしていくことが重要であると思います。
 私自身としては、引き続き水運の歴史、また、日本人が水とどのようにかかわってきたかという歴史を研究することはもちろん、日本国内でも水や水管理に関係のある施設や場所などの視察も行いたいと考えています。また、国連「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁として、今後の諮問委員会の活動に関心を持ちつつ、水の問題をめぐる様々な動きに関心を寄せていきたいと思っております。
(関連質問)
(問1)これまでの質問と直接関係しないことになって大変恐縮なんですが、国民の関心の大変高いことだと思いますので、あえてお聞きさせていただきます。先日、羽毛田長官が殿下の御所への参内の回数について異例の発言をなさいました。皇族にお仕えする立場である宮内庁の長官が、直接殿下に、言葉は微妙ですけれども、苦言のようなことを申し上げた。このことについては我々記者だけでなく、多くの国民も衝撃と共に多少の違和感というものを感じたと思うんですが、このことに関して殿下の御感想をお聞きしたいと、それともう一つ、これは私見になってしまうのかもしれませんが、長官が御自分の一存だけであの発言をされたとは、私には到底思えないんですが、皇室の御家族の、御家庭内のことをああした公式の場所で発言せざるを得ない、こういう状況が今の皇室の御家庭の中にあるというこの現状をどのように受け止めていらっしゃるのかお聞かせください。
【皇太子さま】両陛下の愛子に対するお心配りは、本当に常に有り難く感謝を申し上げております。御所に参内する頻度についてもできる限り心掛けてまいりたいと思っております。家族のプライベートな事柄ですので、これ以上立ち入ってお話しをするのは差し控えたいと思います。
(問2)今の関連質問にまた関連するような質問で恐縮でございますが、長官会見の後に、皇太子様は両陛下にお会いになっていらっしゃると思うんですが、その際に、こういうお話、話題があったのかどうかということをお聞きしたいということと、それと殿下の今のお話なんですが、やはり国民が非常に気にしていると思うんですね、そこのところで行かれない理由というのは、正に御家庭内の問題とか、いろいろとございましょうけれど、ただやはりそこのところをもうちょっと、なんというか抽象的でも結構なのですが、殿下のお口から直接国民の方に説明していただくと、国民は安心するんではないかなというふうに思いますんで、その2点をできたらお答えいただければと存じます。
【皇太子さま】そうですね、今もお話しましたように、これは本当に家族の内の事柄ですので、こういった場所での発言は差し控えたいというふうに思っております。

nikkei net
  皇太子さま48歳に・御所訪問「心掛けたい」
 皇太子さまは23日、48歳の誕生日を迎えられた。これに先立ち東宮御所で記者会見し、羽毛田信吾・宮内庁長官が「皇太子ご一家の参内(御所訪問)が増えていない」と発言したことについて、「参内する頻度についても、できる限り心掛けてまいりたい」と述べられた。
 ただ、「家族のプライベートな事柄ですので、これ以上立ち入ってお話をするのは差し控えたい」と、詳しい言及は避けられた。(07:00)

yomiuri on-line
皇太子さま48歳に、長官苦言には「家族内の事柄」
 皇太子さまは23日に48歳の誕生日を迎え、これに先立って記者会見された。宮内庁の羽毛田(はけた)信吾長官が定例会見で異例の苦言を呈したことから発言が注目されたが、御所を訪ねる参内について「できる限り心掛けて参りたい」と述べるにとどめ、「家族のプライベートな事柄」としてそれ以上の発言を控えられた。
皇太子さまは、羽毛田長官の苦言について「両陛下の愛子に対する心配りは常にありがたく感謝申し上げております。御所に参内する頻度についてもできる限り心掛けて参りたい」とし、参内が少ない理由などの質問には「家族内の事柄ですので、こういった場所での発言は差し控えたいと思っております」と繰り返された。
 一方、この一年で印象に残ることとして、食の安全や年金、社会格差などの問題を挙げ、「食の安全は生活の基本であり、関係者の努力により問題が解決に向かうことを願っております」と話された。
 長期静養が続く雅子さまについては「公私を問わず心の触れ合いを大切にしながら、活動の幅を広げることが治療のために必要。長い目で見守って頂きたくお願い申し上げます」。4月から学習院初等科に進学する愛子さまに関しては「手を洗っている時、水を出しっぱなしにして注意された」とのエピソードを披露し、天皇陛下の公務の見直しに対しては「ゆっくりしていただくことを考える必要がある」との考えを示された。水問題に意欲 ご自身の公務については「水の問題も国際社会が一体となって取り組んでいかなければならない最重要課題の一つ」とし、「国連『水と衛生に関する諮問委員会』の名誉総裁の立場で、様々な活動に取り組んでいきたい」と意欲をみせられた。 (2008年2月23日05時04分 読売新聞)

皇太子さま48歳 誕生日会見の詳報(1)
 皇太子さまは23日、48歳の誕生日を迎えられた。これに先立ち、東宮御所で宮内記者会との会見に臨まれた。質問と回答の詳報は以下の通り。
 ――この1年間、殿下にとって印象深かった出来事をいくつかご紹介ください。殿下は昨年、ポリープの切除手術を受けられました。退院の際に「健康の大切さを実感した」と述べられましたが、健康維持のためにどのようなことを心掛けていらっしゃいますか。 皇室では天皇陛下がホルモン療養を続けられ、皇后さまも今年初めに体調を崩されました。健康に不安を抱えられている両陛下を支えられるお気持ちもお話しください。
ご回答
 この1年を振り返ってみますと、国の内外で実に様々なことがあったと思います。国内にあっては新潟県中越沖地震、能登半島地震などの自然災害に加えて、食の安全、年金、社会格差など国民生活の安全と安心に関わる問題が私の印象に残っております。特に食の安全は生活の基本であり、関係者の努力により、これらの問題が解決に向かうことを心から願っております。
 国外にあっては、イラクやパレスチナ情勢など中東地域が依然として不安定であることや様々な地域での紛争の問題なども心配です。また世界的に地球環境問題がより重要性を増してきており、昨年はアメリカのゴア元副大統領やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)にノーベル平和賞が贈られたこともその表れであると思います。
 私のこの1年間の公務の中でも特に印象に残っているものとして、第1回アジア・太平洋水サミットに出席したことが挙げられます。これは国連事務総長からのお話で、国連「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁に就任して最初の活動でもありました。水の問題は世界が直面している地球温暖化を含む環境問題や資源問題の重要な課題の一つです。今年も名誉総裁としての立場で、水問題に関する様々な活動に取り組んでいきたいと思っております。
 もう一つ印象に残っているものとして昨年11月に静岡県で行われ、名誉総裁として出席したユニバーサル技能五輪大会があります。この大会は世界各国の若者が技能を競う技能五輪国際大会と、障害のある人々が技能を競う国際アビリンピックという伝統ある二つの大会が史上初めて同時に開催された大変意義深い大会であったと思います。世界各国から集まった若い人々が障害の有無にかかわりなく、ものづくりに熱心に打ち込んでいる姿には感銘を受けました。科学技術の進歩が著しい中で、ことに若い人々が日本のものづくりを支えていくということは、極めて大切なことと思いました。
 国際交流の面では昨年の7月、モンゴルを訪問したことも強く印象に残りました。日本とモンゴルとの友好関係がいろいろな分野で今後さらに発展することを願っております。
 健康に関するご質問に対してですけれども、昨年は十二指腸ポリープの手術で入院しました。おかげさまで今は全快しており、今まで通りに公務をこなしております。短い入院期間ではありましたが、お医者様や看護に携わる方々の献身的な治療には本当に頭が下がる思いがしました。また内視鏡を使用しての最先端の医療に触れる機会にもなりました。
 健康維持のために心掛けていることについてですけれども、生活の様々な面で留意しています。食生活はもとより適度な運動も健康維持の上では大切だと思います。運動としてはテニスやジョギングが日常での運動になります。ことにジョギングは短い時間でよい運動になりますし、雨や雪などが降っていなければ行うことが出来ます。私自身は1回のジョギングでこの赤坂御用地の中を2周から3周するのですけれども、先月1か月間で100キロメートルを超える距離を走りました。今月17日に行われた東京マラソンでの参加者の多さや皇居の周りを走るランナーの多さを見ても、国民の多くがランニングやジョギングを楽しんでいることがよく分かります。ジョギングは無理をしなければ健康維持にとても役に立つと思います。もちろんテニスや、回数は少ないですけれども登山やスキーも私の健康維持には欠かせません。
 両陛下のご健康に関しては、私は両陛下がご健康でお元気にお過ごしになられますことを常に心から願っております。そしていつでも必要なときには皇太子として天皇陛下をお助けできればと思っておりますし、どのようにお助けするのが最もお力になれるか、常に考え、努めていきたいと思っております。
皇太子さま48歳 誕生日会見の詳報(2)
 ――今年、皇太子同妃両殿下はご成婚15周年を迎えられます。15年間を振り返り、印象に残ったこと、苦労されたことなどをお聞かせ下さい。現在療養中の妃殿下のご回復状況と、本格的なご公務復帰の見通しはいかがでしょうか。最近、妃殿下の私的な外出が増えていますが、殿下はどのようにお考えですか。
ご回答
 もう結婚15周年かと、年月がたつのは早いものと思います。結婚10周年の際に雅子とともに詳しく感想を述べておりますので、その後の5年間に限らせていただきますと、何より大きいのが愛子が成長し、3人でいろいろな楽しみや喜びを見いだすことが出来ることです。他方で雅子が病気を患い、現在も治療中であることも大きな出来事でした。
 雅子の現在の状況は昨年の誕生日に際して本人の感想と東宮職医師団の見解に述べられていますように、少しずつではありますけれども、快方に向かっておりますが、なお治療を必要としております。雅子は依然として体調に波がある中、自分でもいろいろと工夫をしながら公私を問わず活動の幅を広げるよう努力してきており、公務についても少しずつではありますが、頻度が増えてきています。以前に比べ公務の後の疲れから回復も早くなってきているようには思いますが、頑張りすぎて疲れることなどもありますので、お医者様からは内容を慎重に考えながら活動の幅を広げていくよう指導を受けております。
 公務については回復に伴って少しずつ積み重ねていくことにより、徐々に復帰していくことになると思います。現状では公私を問わず心の触れ合いを大切にしながら負担の少ないところから活動の幅を広げることが治療のために必要とのお医者様の見解をご理解いただき、引き続き長い目で見守っていただきたくお願い申し上げます。
 また結婚10周年の時にも申しましたけれども、雅子はいろいろな面で私の力になってくれていますし、私も雅子を今後ともしっかりと支えていきたいと思っております。
 ――殿下はこの1年間、愛子さまのご成長をどのように見守られましたか。愛子さまはこの春、学習院幼稚園を卒園し、初等科に進まれます。最近のご成長ぶりと、ご趣味や好きな遊びなどを、エピソードを交えてご紹介ください。また、幼稚園2年間の思い出と現在のご心境、小学校生活に寄せる思いも、お聞かせ下さい。
ご回答
 2年間にわたった愛子の幼稚園生活も、残すところ後わずかとなりましたが、この2年間で心身共に大きく成長したと感じます。幼稚園入園当初は愛子にとって初めての集団生活でしたが、先生方の温かいご指導のもと、すっかり幼稚園生活にもなじんで、多くの友達もでき、毎日本当に楽しく通園しています。幼稚園生活では父母が子どもと共に参加する行事も、例えば運動会や参観日などですけれども、そういったものの一つ一つが楽しい出来事でした。また愛子には幼稚園の外にあっても、入園以前からのお友達とも音楽や体操の教室などを楽しんでおり、そのような時にも成長ぶりが感じられます。
 この1年間ではことに漢字に興味を持つようになり、自分でいろいろな漢字を書くようになりました。特に人の名前を書くことに関心があるようですが、中には難しい字もあります。遊びごっこでは、家族ごっこなどのごっこ遊びが今とても好きなようです。普段は、うちの犬や亀をかわいがり、昆虫なども好きで生き物を大切にしております。また歌を歌うことが好きで、バイオリンやピアノにも関心を示しています。誕生日などにはいろいろと手作りのものを作って、両陛下や私たちにプレゼントしてくれます。また愛子と一緒に手を洗っている時に、私が手にせっけんを付けている間に水を出しっぱなしにしてしまい、愛子に水を止めるように注意されたことがあります。
 4月からは学齢に達し、学習院初等科に入学することになりますが、新しい環境の中での生活を元気に始めてくれることを願っています。皆様にはこれまで愛子の成長を温かく見守っていただいてきておりますことに感謝しております。
皇太子さま48歳 誕生日会見の詳報(3)
 ――皇室ではこのところ、天皇皇后両陛下のご多忙な公務日程の見直しが検討課題に上がっています。両陛下の公務の現状と皇室の公務分担のあり方について、殿下のお考えをうかがいます。
ご回答
 このことについては以前からもお話ししていますように、すべての公務は「天皇陛下をお助けしつつ国民の幸福を願い、国民と苦楽を共にしていく」という皇室のあるべき姿が基礎にあります。天皇陛下のご公務を拝見していると、もちろん国事行為としてのご公務がおありになるわけですけれども、それに加えて天皇というお立場であるがゆえに公平性などが重んじられて、式典や皇居の中での、外からは見えないところでのご公務なども随分おありになると思います。
 陛下のご年齢を考えますと、陛下のお仕事の全体の量をよく把握しながら、ご公務の調整をしていくことは大切なことと思います。私としては陛下がもう少しお休みになれる機会をお作りし、ごゆっくりしていただくことを周囲が考える必要があると思います。この辺のことは周囲が陛下とよくご相談しつつ、陛下のお気持ちに沿う形で、事を進めていくことが大切と考えます。
 ――殿下のご公務についてお聞きします。殿下は以前から世界の水問題に関心を持たれ、昨年は「アジア・太平洋水サミット」に参加されたほか、国連の諮問委員会の名誉総裁に就任されました。こうした活動を踏まえ、改めて世界の水問題についての殿下の思いをお聞かせ下さい。水問題に関するご活動は、今後のご公務や研究活動にどう生かされますか。
ご回答
 最初にもお話ししましたが、環境問題はいまや世界共通の関心事になっていると言っていいと思います。水の問題も今後、先進国、開発途上国を問わず、国際社会が一体となって真剣に取り組んでいかなければならない最重要課題の一つです。私も国連「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁という立場で今の自分に何ができるかということを考えていかれればと思います。水の問題は世界が直面している地球温暖化を含む環境問題や資源問題の重要な課題の一つです。今年も名誉総裁としての立場で、水や衛生の問題に関する様々な活動に取り組んでいきたいと思っていますし、これまで以上にこの問題についての理解を深めていくつもりです。
 その意味でも、昨年12月の第1回アジア・太平洋水サミットへの出席は、水問題について学ぶとても良い機会になりました。ヒマラヤの氷河が解けることにより、氷河の下流域に住む人々が洪水の被害に遭うことが現に起こっていること、海面上昇に伴い太平洋のツバルなど島嶼(とうしょ)国では水没の危機にさらされている国があること、さらに海面の上昇は井戸の飲み水に塩分が混入する結果を招いていることなどです。国連のまとめによれば、世界では11億人が安全な水を飲むことができず、このうちの約60%がアジア・太平洋地域で暮らしており、トイレなどの衛生施設を持たない人が世界では26億人いて、その70%がアジア・太平洋地域で占められているということです。このような現実を直視し、皆で叡智(えいち)を結集して力を合わせて解決策を見いだしていくことが重要であると思います。
 私自身としては引き続き水運の歴史、また日本人が水とどのようにかかわってきたかという歴史を研究することはもちろん、日本国内でも水や水管理に関係のある施設や場所などの視察も行いたいと考えています。また国連「水と衛星に関する諮問委員会」の名誉総裁として今後の諮問委員会の活動に関心を持ちつつ、水の問題を巡る様々な動きに関心を寄せていきたいと思っております。
皇太子さま48歳 誕生日会見の詳報(4)
 ――(関連質問)これまでの質問と直接関係しないことになって大変恐縮なのですが、国民の関心が大変高いことですので、あえてお聞かせ下さい。先日、羽毛田長官が殿下の御所への参内の回数について異例の発言をなさいました。皇族にお仕えする立場である宮内庁の長官が直接殿下に、言葉は微妙ですけれども、苦言のようなことを申し上げた。このことについては我々記者だけでなく、多くの国民も衝撃とともに多少の違和感というものを感じたと思うのですが、このことに関して殿下のご感想をお聞きしたい。
 それともう一つ、これは私見になってしまうかも知れませんが、長官がご自分の一存だけであの発言をされたとは私にも到底思えないのですが、皇室のご家族の、ご家庭内のことを、ああした公式の場所で発言せざるを得ない、こういう状況がいま皇室のご家庭の中にあるという現状をどのように受け止めていらっしゃるのか、お聞かせ下さい。
ご回答
 両陛下の愛子へ対するお心配りは、常にありがたく感謝を申し上げております。御所に参内する頻度についても、できる限り心掛けて参りたいと思っております。家族のプライベートな事柄ですので、これ以上立ち入ってお話しをするのは差し控えたいと思います。
 ――いまの関連質問にまた関連するような質問で恐縮でございますが、長官会見の後に両陛下に皇太子さまがお会いになってらっしゃると思いますが、その際にこういうお話、話題があったのかどうかということをお聞きしたいということと、いま殿下のお話なのですが、国民が非常に気にしていると思うのですね。
 行かれない理由というのは、まさにご家庭内の問題ということはございますが、抽象的でも結構なのですが、殿下のお口から直接ですね、国民のほうに説明していただくと、国民も安心するのではないかなと思いますので、その2点を殿下からお答えいただければと存じます。
ご回答
 今もお話ししましたように、これは家族内の事柄ですので、こういった場所での発言は差し控えたいというふうに私は思っております。
   
 

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